2013年1月21日月曜日

Phasemation EA-1000

ブランド設立からわずか10年足らずで国内有数のアナログ関係のメーカーへと躍進したPhasemation。特にP-3GというカートリッジとEA-3Ⅱというフォノイコライザは業界標準機
と呼べるくらい地位を確立している。そんなPhasemationからブランド10周年記念としてEA-1000というフォノイコライザとPP-300PP-MONOというカートリッジがリリースされた。

リリースされて少し時間が経過してしまったが、試聴会にてその音を確認することができた。どの製品も良いが、特にEA-1000は素晴らしい出来だった。

EA-1000は見ての通り、3つの筐体で構成される。LとRの各イコライザ回路と電源回路だ。さらに入力はMC1、MC2、MMの3系統あり、イコライザカーブは通常のRIAAカーブ以外にも、モノラルファン用にデッカとコロンビアのカーブ、SP再生カーブも備えている。まさに至れり尽くせりといった充実具合だ。

LRが別筐体なので広がりがよく、奥行き表現が優れている。音にも厚みがあるので、演奏者の実在感があってとても楽しい。また、歪み感をほとんど感じないのでとてもリラックスして聴く事ができる。聴感上のS/Nや定位はとてもアナログとは思えないが、滑らかでいて厚みのある音は確かにアナログレコードの音。「少しでも良いアナログサウンドを」と求めていった結果行き着いた音だと思う。

総評

約100万円というのは高価だが、充実した機能とその音は価格以上満足感を与えてくれる。正直なところEA-3Ⅱよりもコストパフォーマンスが高いと感じてしまう。アナログらしい音を少しでも良い音で聴きたい人は一聴の価値がある。

2012年11月30日金曜日

PIEGA COAX 10.2

ブックシェルフスピーカーのメリットって何だろう?それをPIEGACOAX 10.2はわかりやすく教えてくれる優秀なスピーカーだ。
この前モデルのTC10Xも注目していたスピーカーだったが、結局一回も聴かないまま生産完了となってしまった。この度、モデルチェンジということで近くのオーディオショップで期間限定展示ということで短い時間だが試聴してきた。

セット構成は以下の通り。

CDプレーヤーESOTERIC K-03
プリメインアンプ OCTAVE V70SE
スピーカー PIEGA COAX 10.2

※スピーカースタンドは残念ながら純正品ではなかった。

まずは、オーケストラをかけてみる。低域の量感もあるし、音もそれなりに明快。悪い音ではないのだが、取り立てて良い所もない音。ここで軽くスピーカーの位置を調整して、耳の位置をツイーターの少し下あたりで聴きなおしてみると、全く違った世界が展開された。

まず奥行き表現がグンと広くなる。オーケストラが弧の形をしているのがよくわかり、奥に配置されている楽器もしっかりとその位置から音を届けてくれるように鳴っている。また、演奏者までの距離が明確に表現される。各楽器のニュアンスも明確に聴き取れるようになる。
ブックシェルフスピーカーはニアフィールドで聴いても、しっかりとしたステージを表現する。大型スピーカーのように眼前に等身大の演奏者は表すことはできないが、奥行き表現の得意さも手伝って少しはなれた位置からオーケストラを見渡すことができる。これは眼前に等身大が現れるよりも現実に近い空間表現だろう。

ブルースをかけてみるとボーカルがぐっと前に出てきて迫力がある。ブルース独特の濃さが表現されているし、声の小さなニュアンスも漏らさず表現する。どこかの帯域を強調して表現するのではなく、しっかりと細かい音まで丁寧に表現した結果だろう。ここまで男性ボーカルのニュアンス表現が優れているスピーカーは珍しい。

総評

スッキリとしたデザインとは裏腹に元気の良い音も出せるし、同軸リボンを活かした繊細な表現も可能。ソースやセッティングにあわせてキャラクタが変わり、様々なジャンルの音楽を聴く人にはとても良いスピーカーだ。
高価なスピーカーだけあって、その音は50万クラスのスピーカーでは追いつけないだろう。音の細かさ、定位、空間表現、音像の濃さといった部分が見事だ。

反面、やはりセッティングには敏感だ。特にボーカルと空間の表現力は大きく差が出てしまう。といっても特別鳴らすのが難しいわけではなく、このクラスのスピーカーを使う人ならば十分対応可能だろう。

2012年7月10日火曜日

JELCO(BELLDREAM) SA-250

現在のアナログプレーヤーはトーンアームという観点から見ると大きく3つに大別できると思う。

①ユニバーサルアームをつけたモデル

素材や機構は昔ながらのものが多く、最新のアナログというよりかは古き良きアナログ再生といったところがメインになるだろう。

②専用ストレートアームがついたモデル

アームも機構も最新の考え方を取り入れたモデルが多い。しかし、専用のストレートアームのモデルでは、カートリッジを付け替えることが難しい。

③アームレスモデル

②と同様の考えで最新のアナログサウンドを目指すこともできるし、ユニバーサルアームをつけてカートリッジを付け替えて楽しむこともできる。

ここで問題なのは③でユニバーサルアームをつける場合。最新のアナログサウンドを求めていくならば自分が最も良いと思う技術革新を取り入れたアームをつければ良いが、ユニバーサルアームを使う場合は選択基準が難しい。特にユニバーサルアームが昔と比べクオリティがどうなのか気になるところ。

ということで今回試聴してみたのは、おそらく現在発売されているユニバーサルアームの中で最も安いであろう、JELCO(BELLDREAM)のSA-250。このアームのクオリティが十分であれば現在市販されているアームを安心して買うことが出来る。


※ターンテーブルはTechnics SP10、カートリッジはDENON DL-103で試聴

まず軽くアームを左右に動かしてみたが動きは滑らか。ワンポイント支持ではないので取り扱いも神経質にならなくてすむ。思っていた以上に軽く動き、ストレスも感じない。

針をレコード盤に落として、音を聴いてみる。これも思っていた以上にクオリティは高い。ストレートアームのような正確さや緻密さは感じないが、十分な解像度を持っていることがわかる。安いプレーヤーのストレートアームより解像度は高いだろう。

音の傾向はどちらかというとカチっとした輪郭のハッキリした音で演奏者の姿をハッキリと描く。下手にセッティングされたアナログプレーヤーの場合、いわゆる曖昧さのようなものが出ることがあるが、このアームはセッティングは楽なのでそうゆう心配もない。

しかし、演奏者の姿をハッキリと描くが、その中の細かい部分までは表現しきれていない。また、空間表現も下手なわけではないが、音がスピーカーからフワリと広がっていくような感覚は少ない。しかしそういったクオリティの高い表現力はもっと高いシステムでないと聴いたことがない。このアームでもターンテーブルや、カートリッジを変えることでそういった表現が出来るようになるかもしれない。

総評
アナログを楽しむために十分なクオリティを備えたアーム。設計自体に目新しい技術はないが、それでも古さを感じさせる音ではない。また、新品で手に入るのはとても有難い。過去の名機と呼ばれるアームでも、今では錆びや稼動部の動きに滑らかさがなくなっていたりと、その能力を100%発揮するのは難しい。下手に劣化した過去の名機を使うよりかは、きっといい音を奏でてくれるだろう。
ターンテーブルを買う際に、「アームに回す予算が・・・」なんて人はとりあえずこのアームを使っても問題はないだろう。十分ターンテーブルの良さを引き出すだけの力は持っていると思う。

2012年7月5日木曜日

Audio Technica AT33MONO

アナログレコードを楽しむ人はそれなりに多いが、モノラル盤をモノラルカートリッジで楽しむ人はそこまで多くない。しかしモノラル盤にはステレオとはまた違った魅力が凝縮されている。しかし、モノラルカートリッジは試聴できる機会も少なく、そもそも商品自体が少ない。しかもカートリッジ自重が重いものも多くとても使いづらい。そんな中で、Audio TechnicaのAT33MONOは比較的、低価格で発売されているので試しに購入してみた。
Audio TechnicaのAT33シリーズといえばロングセラーとなっているシリーズ。現在でも33EVと33PTG/Ⅱが発売されている。その33シリーズをモノラル化したので性能としては十分だ。また、33シリーズをモノラル化しているのでステレオカートリッジとモノラルカートリッジでそろえることもできる。うまくいけば針圧調整もいらず、とても楽にモノラルカートリッジを使うことができる。

音はまとまりの良い、スッキリとしたサウンド。いわゆるモノラル特有の厚みは少ないが、広がりや奥行きのあるサウンドで決してステレオに見劣りするような音ではない。モノラルというと50年代がメインとなると思うが、全く古さが感じられない。盤の状態さえ良ければ、録音年代を当てるのは難しいだろう。

ただし、やはりモノラル特有の厚みやエネルギー感といったものもソースによっては求めたくなる時もある。ただ、そういったものも求めつつこのワイドレンジ感も得ようと思うと、かなり高価格のカートリッジになってしまう。この価格でここまでのクオリティを実現しているのは、さすがカートリッジの老舗メーカーといったところだろう。

2012年6月24日日曜日

Fundamental LA10

大手メーカーとは違った目線で様々なオーディオ機器をリリースしているSOULNOTE。そのSOULNOTEの別ブランドFundamentalからフラグシッププリアンプLA10が発売された。今までのSOULNOTEは50万円を超える機器は出していなかったが、このプリアンプだけは一切の妥協をせずに開発したため、100万円を超えるハイエンド機となった。

    


このプリアンプはゲイン0dB。純粋なボリュームコントロールとパワーアンプをしっかりとドライブすることに注目した、現代のプリアンプとしてあるべき姿を目指している。詳しいことはカタログを見てもらうとして、気になるのはやはりその音。100万もして、セレクタすらついていないプリアンプ。いったいどんな音なのかと思い試聴会に参加したのだが、正直言って「参りました」の一言しか出てこなかった。しかし、さすがにそれじゃあレビューにならないので少しは感想を・・・。

まず、空間がとても広く展開されてその空間に現れる音像にまったくにじみがない。当然、2chオーディオなのでスピーカーは2本ありその間に演奏空間が展開される。その演奏空間に楽器がそれぞれあるのだが、その楽器の位置が前後左右にまったくブレない。音の発生源がここまで明確に表現できるオーディオ機器はまず聴いたことがない。

では空間表現以外はというと、これがまったく特徴がない。しかしこの特徴のない点が恐ろしいレベルになって。いる。ともかく特出して何かが良いわけではなく、すべてのレベルが高い。そのせいで何が良いとか悪いとか言えるレベルではなくなってしまっている。

SOULNOTEはアーティストとリスナーの距離を近づけることを目的としている。今までは漠然とその言葉を聞いていたが、このLA10の試聴会で具体的にどんなことを目指しているのかが明らかになってきたと思う。

2012年3月14日水曜日

SPENDOR SP2/3 R2

イギリスのスピーカーはかなりの数が日本国内に輸入されている。B&Wをはじめ、タンノイ、QUAD、KEF等・・・。たぶん、世界一スピーカーメーカーが多い国だと思う。しかもどのメーカーもそれぞれ魅力的だ。

さてそんなイギリスのスピーカーメーカーの中でもHarbethとSpendorの二社はかなり似たスピーカーを作っている。今回、紹介するSpendorのSP2/3 R2に対してHarbethではHL-Compact7 ES-3が価格的にも大きさも姿形もよく似ている。しかし、雑誌などでもHarbethはかなり評価されているが、Spendorは余り評価されていない。お店もHarbethは置いてあるけど、Spendorはないってところが多い。じゃあSpendorはHarbethに比べて良くないのかっていうとそうではないと思う。
このスピーカーはHarbethに比べると低音の伸びや解像度といったところでは劣っているとは思う。空間の奥行きもHarbethの方が出ている。しかしHarbethはどちらかというと、ジャズ、クラシックといったソースを聴くにはいいが、ロックには少し物足りない。Spendorの方がギターのトーンに色艶があり、ボーカルの張り出しも気持ちが良い。
クラシックでもSpendor特有の艶のある音は、Harbethに比べても聴き劣りはしないと思う。ようはどっちが気に入るかだ。

Spendorの弱点は専用スタンドがないこと。この大きさのスピーカーは版用品のスタンドは少ない上、響きのあるスピーカーなので置き方は非常に気をつけなければならない。また、Harbethに比べるとアンプも選ぶ傾向にある。

あとはHarbethよりもセッティングをしっかりするべきだろう。このスピーカーは中途半端なセッティングでは十分な空間表現ができないと思う。スピーカー幅をなるべく広くとり、壁から離してあげることにより、想像以上の奥行きと音に包まれる感覚が味わえるはず・・・。UKロックなんかを、迫力だけでなく、音色や空間まで含めて楽しみたい人にはとても良いスピーカーのはずだ。

2012年1月10日火曜日

ALBEDO HL2.2

パッとみた感じではデザイン重視と思えるが、実は理論重視で設計されたALBEDO HL2.2。そう聞いていてはいても、実際に音を聴くまでは半信半疑だった。実際インターナショナルオーディオショウでもこのスピーカーはあまり印象に残っていない。なんとなく物足りないなと感じていた。
しかし、先日このスピーカーの試聴会に参加したところ、思いのほか良い音がするのでビックリ。なんでインターナショナルオーディオショウではあまり印象に残らなかったのだろう?

このスピーカーの音色はどちらかというと美音系。程よく美しい音で、音楽にゆっくり浸れる音がする。また、筐体がスリムなので音の広がりがとても良い。どこで聴いても音が通ってくる。

このスピーカーは音色も良いが、最大の利点はバランスがいいこと。ユニットが小さく、エンクロージャーが小さいスピーカーでは「見た目以上の低音の量感があり~」なんてレビューを目にすることがある。さてコイツはどうかというと、低音の量感は驚く程ではない。じゃあ不足しているかというとそうでもない。必要にして十分な低音だ。そして、高域から低域までのつながりがいいため、全帯域の音が一体となって響く。

しかし、やはり低域の伸び、解像度といった点では同価格対で、さらに優れた製品があるのも事実。音楽に真剣に向き合って聴くような聴き方をするのであれば、もっと適した製品があると思う。また何処となく美音系なので、ジャズやロックには少し物足りなさを感じるかも知れない。

それでもコイツには人を魅了する力がある。雰囲気がよく、小さい音量でも気分良く聴ける。リビングで紅茶でも飲みながら、何処となく美しい音が流れてくる。そんな生活が送れたらどんなに素晴らしいだろう?